認知症になると銀行口座が凍結されてしまう
認知症等に伴い口座名義人の判断能力が低下したことが銀行などの金融機関に発覚すると、口座からの払い出しや振込み手続等ができなくなる「口座凍結」がされてしまいます。

口座名義人の財産保護を目的に口座凍結されることになるわけですが、その口座が年金の受取り口座であったり、生活資金が入っていた口座であった場合には家族や親族が当面の生活費や介護費、医療費を立て替えなければならず、大きな負担になってしまいます。
よくある勘違いとしては、家族であれば本人でなくとも銀行口座から預金を払い出しても問題ないというものです。家族であっても、本人の意思によらない預金の引き出しは本来は違法です。(実際には黙認されていることが多いです。)また、引き出したお金を口座名義人本人のためでなく、自身の生活費や遊びのための費用に使ってしまった場合は犯罪になる可能性が高いので注意しましょう。
銀行口座が凍結されたらどうしたらよいか
成年後見制度(法定後見)を利用する
認知症により銀行口座の凍結がされてしまった場合に預金の払い出しをするには、口座名義人本人の成年後見人を選任し、口座凍結の解除を行う以外方法がありません。
じっさい、裁判所から発表されている資料によると成年後見等の申立ての動機(令和5年1月~12月)は「預貯金の管理・解約」が最も多い動機となっており、37,531件(割合として31.1%)と報告されています。
成年後見制度とは認知症や精神疾患等で判断能力が低下した人を保護・支援する制度であり、後見人は家庭裁判所の監督の下で被後見人に代わり財産管理や身上監護(療養看護に関する契約や介護施設などへの入所などのサポートを行うこと)を行います。成年後見人についてより詳細をご覧になりたい方は下記をご覧ください。
成年後見制度(法定後見)のデメリット
成年後見人選任は時間・費用がかかる
成年後見人を選任するには時間や費用がかかります。最低でも選任までに3カ月以上はかかり、後見人申し立てのための書類は種類が多く多岐にわたるため、書類を準備するのは大変な労力が必要です。
また、選任された成年後見人が弁護士・司法書士などの専門職であった場合、所有財産に応じて月に2万円~6万円の報酬を払う必要があります。しかも、成年後見人は選任された後解約することは原則できませんので、亡くなるまで報酬を支払い続ける必要があり、大きな費用負担が生じることになってしまいます。
家族や親族の方が成年後見人になった場合は報酬は原則不要となりますが、定期的に被相続人の財産目録や収支報告書などの書面を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません。なお、後見人等に親族が就任することは全体の2割未満となっており、弁護士などの専門職が残り約8割を占めています。
財産の使用方法に制限が生じる
成年後見制度は基本的に本人の財産を守るための制度なので、銀行口座の凍結解除を行ったとしても本人の財産を減らすリスクのある行為はできません。例えば孫に財産を教育のための資金を贈与する(生前に孫の学費の面倒をみると本人が言っていたとしても)ことや、相続税対策のために生前贈与するなどの行為は不可能となってしまいます。
認知症になる前に対策をとりましょう
できれば認知症になる前に、先述したデメリットを補うための家族信託や任意後見、各金融機関の代理人予約サービスなどの対策を講じることが重要です。というのも、法定後見以外の認知症対策の制度は判断能力が低下する前の元気な時にのみ利用できるためです。
親や祖父母等の口座が凍結されてしまい資産管理が難しくなっている方がいらっしゃいましたら、今できる対策や手続きのサポートをさせていただきますのでぜひお気軽にご相談ください。