成年後見人とは
成年後見人は認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が十分ではない人を法的に保護するため、財産管理や各種契約、生活支援をする人をいいます。

実は成年後見人になる人は特別な資格が必要とはされていませんので、成年後見人の欠格事由に該当しなければ家族や友人知人も成年後見人になることができます。また、身近な支援者である親族が成年後見人には望ましいともされています。
成年後見人の欠格事由
- 未成年者
- 過去に成年後見人等であったが家庭裁判所によって解任されたことがある者
- 破産をした者
- 現在または過去に被後見人に対して訴訟を提起したことがある者、その配偶者および直系血族
- 行方が分からない者
実際に親族が成年後見人になるのは2割以下
ただし、最高裁判所事務総局家庭局が発表している「成年後見関係事件の概況」(令和5年1月~12月)では配偶者、親、子などの親族が成年後見人等に選任されたのが全体の約18.1%と約2割にとどまっていることが報告されています。
それでは、残りの約8割についてどんな人が成年後見人に選任されているのかというと、法律や福祉の専門家である弁護士や司法書士、社会福祉士等が成年後見人に選任されています。
特に後見業務として被後見人の本人名義の不動産や資産が多数あったり、他の相続人との間で遺産分割協議を行う必要のある場合や親族間で争いごとがある場合は親族でない、いわゆる専門職の後見人が選出されることが多いようです。
家族が成年後見人になるメリット
1.被後見人の意思や望みを実現しやすい
家族が成年後見人になれば、家族として被後見人の考え方や想い、性格を十分に把握している可能性が高く、お金の使い方や介護などについて被後見人の望む判断ができることが期待できます。また、専門職の後見人のように知らない人に財産を管理されたり、大事な契約を任せるよりも気心の知れた家族に管理してもらった方が安心だという人も多いかもしれません。
2.報酬費用が掛からない
弁護士や司法書士などの専門職に成年後見人を依頼した場合、被後見人の資産に応じて1か月で2万円から6万円程度の報酬を支払う必要があり、大きな出費となってしまいます。ちなみに成年後見人は一度選任されると途中でやめることはできませんので、長期間にわたって報酬費用が掛かることも想定されます。(医師の診断書で障害や症状の回復が認められ、家庭裁判所で取消が認められるとやめられますが、少ないケースだと考えられます。)いっぽう、家族の場合は原則報酬が掛かりませんので、大きなメリットがあります。
家族が成年後見人になるにあたっての注意点
後見人による財産使い込みのリスクがある
最高裁判所事務総局家庭局実情調査によると、令和5年の後見人による財産の使い込みなどの不正事例は184件ありました。うち29件(約15.7%)が専門職による不正事例であり、親族などの専門職以外では155件(約84.2%)となっています。本調査によると、不正事例は専門職が後見人になっているケースより非専門職である家族が後見人になっているケースのほうが割合としては多い傾向が続いています。
家族などの親族が成年後見人になると自分の財産と被後見人の財産の区分けが曖昧になりがちになり、結果として財産の使い込みなどのトラブルに発展しやすいと推定されます。
裁判所に提出する書類手続が煩雑
成年後見人になると、被相続人の財産目録や収支報告書などの書面を作成し、定期的に家庭裁判所に提出しなければなりません。慣れない事務手続きは成年後見人にとって大きな負担になりやすく、場合によっては専門家の助けを必要とすることもあります。結果として成年後見人としての職務を十分に果たせなくなることもあり得ます。